高齢者が増える中で、近年高齢者の筋肉量低下がいわれています。
お肉が体に悪いイメージがどことなくある中で、高齢者になるとお肉を食べない人が増えてきています。お魚も必要ですが、お肉も体にとっては必要なのです。
しかし、高齢になると歯のそろっている人は少なく、お肉を噛み切れないため食べない人もいます。高齢者が筋肉をつけるには、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
高齢者の筋肉をつけるときに、気をつけることを詳しくみてみました。
高齢者の筋肉量低下で起こる現象
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サルコペニア
サルコペニアとは筋肉が減少し1年で約5%以上の筋肉量が減少します。筋肉は40歳ごろから徐々に減少しますが、高齢者になればなるほど、筋肉量が落ちてきます。
サルコペニアはギリシャ語でサルコ(筋肉)とペニア(減少)を組み合わせた造語で、筋肉を維持させ増加させるには、適切な栄養を摂取して適度な運動を行うことが大切なのです。
ロコモティブシンドローム
加齢になってくると筋肉・骨・関節に支障をきたし、毎日の生活が困難になることを、ロコモティブシンドロームといいます。また、この長い名前を略してロコモといいます。
高齢者が筋肉をつけるには2点気をつけよう!
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1.高齢者が筋肉をつけるには適度な運動
運動をするときは、若い人のように負荷の大きい運動をする必要はありません。
負荷は低めでも繰り返し行うことが重要です。
椅子から立ち上がる・座る・歩くを繰り返して、特に下半身を鍛えると転倒のリスクを少なくできます。
運動量が低下すると
- 体が太りやすくなると同時に筋肉量が低下してきます。
- 筋肉量が低下すると転倒や骨折をしやすくなります
- 骨折すると骨を固定している間に運動量が減って、また筋肉量が低下すると悪循環になります
- ロコモティブシンドロームやサルコペニアに罹る可能性が大きくなります
2.高齢者が筋肉をつけるにはたんぱく質の摂取が必要
適度な運動をしても、たんぱく質が不足していると筋肉の維持や増加はあり得ないのです。
私たちの体で一番多くの割合を占めているのが水分です。
水分の次に多いのが、たんぱく質です。
たんぱく質は私たちの体の20%を占めています。
ですから、体を正常に維持するためには、水分・たんぱく質は不可欠なのです。
たんぱく質の構成しているものに、20種類のアミノ酸があります。
これらのアミノ酸はたんぱく質を摂取すると、消化酵素の働きで体内でアミノ酸に分解されるのです。そして、血液に吸収された後、再びたんぱく質が合成され筋肉となっていくのです。
20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内では合成されません。
ですから、9種類のアミノ酸は必須アミノ酸といって毎日食べ物から摂取しなければなりません。
その中でも筋肉増強に特に欠かせない必須アミノ酸のロイシンは、筋繊維を構成するたんぱく質の中での割合が多くを占めているのです。このロイシンは筋肉増強栄養素ともよばれています。
たんぱく質は1日の間で合成と分解を繰り返すため、夜だけまとめてとか、朝・昼だけまとめて摂るやり方はたんぱく質を正常に合成ができなくなるのです。
ロイシンが多く含まれる食品に、牛肉、レバー、牛乳、チーズ、大豆などです。高齢者は意識して摂らないと体に吸収されにくいです。
高齢者による栄養低下
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高齢者になればなるほど、たんぱく質の肉や魚を多く摂らないと、筋肉がつかなくなって栄養失調状態になります。
1日に摂るたんぱく質の量は体重×1gで、肉+魚+卵+大豆+乳製品が必要です。
そのメインとなる肉やお魚を摂る点が一番大事になってきます。
高齢になればなるほど、お肉をたくさん食べて適度な運動をすることが大切なのです。
高齢者の栄養低下の原因
高齢者になるといろいろな機能が低下し、生活環境も変わってくる人が多いです。
生活環境による食欲低下
高齢者のみとか、一人住まいの場合、自分たちの好きな食品や食材だけを食べていると、低栄養素を起こしやすくなります。
また、閉じこもりなどの生活環境が精神的要因になり発生することが多いです。
認知症の影響によるもの
いつも決まった食材しか食べない認知症の方は、低栄養に陥りやすいです。
食べることは体を維持することでもあるので、いろいろな栄養素を取り入れることが大切です。
高齢者になると、どうしてもあっさりしたものに偏りがちになります。
たんぱく質を十分摂れなくなると、栄養失調になって、脳卒中や心臓病を引き起こすリスクが2.5倍、認知機能の低下を引き起こすリスクが2倍になります。
味覚の低下
高齢者になると味付けの濃いものを好むようになり、味覚低下が起こってきます。糖分や塩分を摂りすぎることになって、食べるものの好みが変わってきます。
噛む咀嚼力の低下
高齢者になると噛む力(咀嚼力)飲み込む力(嚥下力)が低下してくるため食欲の低下が起こります。固いものや繊維質の食べ物を避け、肉や野菜、果物などが不足してきます。
体の機能が変化することで食欲低下
唾液分泌の減少、消化液の分泌量の減少、腸の働きの低下などで食欲が低下し、初めは体内の貯蔵栄養を利用して代謝を維持していても、低栄養状態に陥り栄養素不足の状態になります。
血中の中のアルブミン値が低い場合は栄養失調のサインとなります。
1年に体重が4キロも5キロも減ってくるのは栄養不足を疑うことです。
人間の老化は下肢から
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足腰が弱くなって転倒することで寝たっきりになる人が増えています。
足腰を鍛えて転倒しても骨折しない体を作らないといけません。
下肢の筋肉を鍛えて、転倒しても骨折しないような体づくりをすることが大事です。
そこで高齢者でもできる、簡単で効果のある筋トレをご紹介します。
高齢者の転倒防止に効果的な筋トレ
1.足の指のグー・パー運動で足首を鍛える
- 椅子に座って素足で足を前に投げ出します
- 足の指をグーと握るように縮めます
- こんどは足の指を思いっきり開きパーの形を作ります
- 足の指でグー・パーを25回繰り返す
足首の筋肉は大地の踏ん張り、体のバランスを取るのに必要な筋肉です。
これをやると足がつることがあります。
もし、つったらすぐやめ反対方向に指を向けます。
2.椅子に腰かけつま先と踵の上下運動
- 椅子に背筋を伸ばして床に足の裏が綺麗につくように座ります
- つま先を床から上げて、踵は床につけたままできるだけつま先を足首の方に近づけます
- つま先を軸にして踵をゆっくりと持ち上げ5秒キープします
- これを15回~20回繰り返しします
これをやると前脛骨筋(弁慶の泣き所の筋肉)を使うことになります。
この筋肉を使うと足の運びがスムーズになります。
また、歩くのに欠かせないヒラメ筋を動かすことになるのです。
そしてつま先が上がることによりすり足が改善されます。
そのためつまずき難くなるのです。
また、下腹部に力を入れてやると腰痛にも効くといわれています。
3.立って何かにつかまって上下運動(ヒールレイズ)
- 椅子の背側や台所の端に手を添えて、両足をそろえて立ちます
- 体重を手の方にかけないで、5秒かけてゆっくりつま先立ちします
- 5秒キープしてゆっくり踵を床に下ろします
- 踵が床につく直前で5秒キープ、お腹に力を入れるとふらつきません
- 踵を床に下ろします
- 10回~15回繰り返します
この筋力トレーニングは、下肢の筋力だけでなく、大腿や腹筋、ふくらはぎが鍛えられます。
早くやると、ふくらはぎがかなり痛くなってきます。
体重は手にはかけないで行うのがポイントで、ゆっくりとした動作でやることで効果が上がります。
高齢者が筋肉をつける際に注意をすること
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続けることが大事ですが、無理をしないことが一番です。
- 体調のすぐれないときはやらない
- お腹の調子の悪いときもやらない
- 脈拍が1分間に100以上あるときはやらない
- たんぱく質を適量に摂ること(タンパク不足にならない)
- たんぱく質は若いときと変わらないので、たんぱく質の量を減らさない
まとめ
現在は100歳まで元気で過ごされる方もおられるようになりました。
その人たちに共通していえることは、たんぱく質を十分に摂って適度な運動を行っていることではないでしょうか?
高齢者になったといって食が細くなりますが、体を維持するたんぱく質は高齢になっても必要なものです。
ですから、たんぱく質を減らさないことが大切です。
そして、繊維質のあるものをよく噛んで食べることが必要です。
そのためには歯の健康も大事になってきます。